元国税調査官が語る!税務調査に選ばれてしまう理由とは

選定

 どのような会社が税務調査の対象となるのか?

国税庁が平成27年11月に発表している「平成26事務年度 法人税等の調査事績の概要 」の中で次のように述べています。

「平成26事務年度においては、大口・悪質な不正計算が想定される法人など調査必要度が高い法人9万5千件について実地調査を実施しました。」

そうです、不正計算が想定される法人、調査必要度の高い法人に調査を行っていると公言しています。それはもちろん、国民の目からしてもそうあってほしいところでしょう。税務職員の人数は限られているわけですから、申告をしている方たち全員を調査するわけにいきません。そうであれば、優先順位をつけて、不正計算をしていると想定される会社から調査を実施すべきです。したがいまして、どのような会社が税務調査の対象となるのかといえば、それはもちろん

 不正計算をしている会社

です。

「不正計算をしている会社がわかるのか?」という疑問が湧くと思います。元国税職員として申し上げますが、わかってしまいます。不正計算をしているが、税務調査に来ていないとおっしゃる方がいるかもしれません。しかしながら、まだ来ていないだけかもしれません。不正計算の場合は7年間遡って本来納めるべき税金を追徴できます。それに加え、税額に35%乗じる加算税と、7年間分の延滞税(年利2.8%〜14.7%)も上乗せして課されてしまいます。(加算税、延滞税等について詳しくお知りになりたい方は「税務調査で課せられる加算税・延滞税の計算方法のすべて」の記事をご覧ください。)

なぜわかるのかというのは、公務員だった者は辞めても守秘義務(職務上知りえた秘密を漏らしてはならない)が課せられますので、そのままずばり申し上げるのは控えるとしても次のような理由を挙げることができます。

外部情報・タレコミ

不正計算・脱税行為を一人で行っているという場合にはこういったことはないかもしれませんが、会社という規模になれば経理担当者を置く場合もあるでしょうし、同じ現場で一緒に働いている社員がいるということもあるでしょう。そのような場合に、例えば架空の支払いを計上するために社員に請求書を作らせるとか、不正計算によってプールしたお金を別の帳簿につけさせるなどの出納管理をさせるといったことが行われたりします。ただでさえ忙しいところ、社長の私腹を肥やすためだけに仕事が増えるわけです。やりがいがあるはずがありません。こういう場合往往にして社員に対する処遇が良くないというケースがあるわけで、そこで辞めた後にこれまでのことを税務署に情報として流し、税務調査を受けて多額の税金を納めさせることでその貸しを清算しようということはあることです。

不正を正したいという方は多くいらっしゃいます。不正な行為を社員の方は見ています。それが何かのきっかけで税務署に流れてくるのです。

ちなみに税務職員は守秘義務が課せられているので、外部情報によって調査を行っているとしてもその発信者のことはもちろん、外部情報があったことも明かさずに調査を行います。

資料情報

国税は国税庁、国税局、税務署と大組織が担っています。その組織力や権限により会社の情報を収集しています。例えば、法人と個人の事業者の方に「取引資料せん」というものの提出をお願いしています。売上、仕入、費用、リベート等に等に関して一定金額以上の取引を行っている相手先の名称、所在地、取引年月日や取引金額、決済方法等々の情報を記載するようになっています。

ある会社が支払っていれば、その相手先は代金を受け取っているわけなので帳簿には受け取った事実が記載されていなければいけません。それが載っていなければ売上を不正に載せずに着服しているのではないかと想定されるわけです。ある会社が銀行振込により支払いを行っている場合にはその振込口座は法人であれば申告書の勘定科目内訳書に記載されているはずです。記載がなければ簿外預金として丸々帳簿に載せずに別管理しているかもしれないと想定されます。

前回調査で不正計算を行っている場合

前回調査で重加算税が賦課されている場合には、会社や業界の体質から再び別の手口で不正計算を行うといったケースは少なくないので、3年後には税務調査が来る可能性が高いと考えていいと思います。

ちなみに税務署で行う調査では前回不正計算を行っていたとしても次の調査まで3年はあけます。3年あかずに調査に来た場合はよっぽど何かあると考えられます。その調査官に聞いてもいいかもしれません。

以上が不正計算を想定する場合の主な理由といえるでしょう。

冒頭で「大口・悪質な不正計算が想定される法人など調査必要度が高い法人」について調査を行っている旨ふれていますが、全部が全部不正計算が想定される会社ばかり調査を行っているかというとそうではありません。前回記事「税務調査を受ける確率と調査1件当たり追徴税額の平均値」でもふれていますが、実際に行われた税務調査のうち3割程度は誤りを指摘されずに終わっています。前述したような情報がなく調査に訪れるケースの方がむしろ多いでしょう。

税務調査は申告納税制度を担保するための重要な役割を演じています。調査を行うことだけでも十分な牽制効果があると言えます。言わば巡回的に行う調査と言えるかもしれません。その中でもやはり申告内容が誤っている会社を調査すべきです。ではこの巡回的な調査の場合どのようにその調査先を選ぶのでしょうか。

 調査先を選ぶその他の理由

その主な要因を列挙してみたいと思います。

 黒字である

一つの要因としては黒字であることが挙げられます。赤字の会社が選ばれないかというとそういうわけではありません。赤字でも誤りがあれば消費税や源泉所得税で納税額が生じますし、何より不正計算をしているために赤字ということも考えられます。ただし利益が出るので操作しようという方が多いでしょうし、指摘した時に赤字を消すよりも納税させた方が調査の効率性は良いのです。やはり調査により国庫に入れられる方が望ましいでしょう。

 前回調査で誤りがある

前回調査で指摘を受けていない会社はやはりしっかり申告をしている会社である可能性が高いので優先度は下がります。2回受けて2回とも指摘を受けていない会社であればほとんど選ばれないでしょう。それと同じ理由で前回調査で誤りを指摘されていればやはりその後も誤りをしている可能性が高くなります。限られた時間で調査は行われるので1つの項目で誤りがあり、そこに時間をかけたために他の項目を十分に見れていないということも考えられます。また、前回調査の誤りが修正されているかを見るという意味もあります。

調査官は調査の内容を記事に残しますので、そういった資料を参考にして選ぶことになります。

 決算書等に異常計数がみられる

決算書の内容を数年間比較されます。その中で例えば売上が増加しているが粗利率が低下している、その要因は外注費が急増しているためだとか、支払手数料が急増しているが、売上は変わっていないといった決算書の数字上で不審な点がある場合はその理由を解明するために選ばれるということがあります。調査に訪れる前に、このような分析から重点的に確認する箇所を絞るということは必ず行われています。

 申告書に記載された内容に不審な点がある

例えば法人税の申告書ですと、勘定科目内訳書というものがあり、得意先の売掛金の残高や支払先の買掛金や未払金の残高に加え、その相手先の情報が記載されています。国税庁は申告者のすべての情報を保有しているわけですから、その相手先の情報を照合することが可能です。

例えば支払先に記載されている会社の申告事績がないといった場合はどうでしょう。支払われているということはその相手先からすればその代金は売上になるわけですから、当然申告されていてしかるべきです。申告していないということは、その会社は実際には存在せず、架空に経費を計上し、そのお金を着服しているかもしれない、という想定がたつわけです。

また、業種特有の理由で不審な点が現れることがあります。勘定科目内訳書には雑益を記載するページがあります。そこにあるべき収入が記載されていないといった場合です。

例えば金属加工を営む会社には、その金属の加工クズを回収にくる業者があり、それが定期的な収入になっています。同業種が雑収入として申告しているのに記載がない場合はその売却収入を計上していないということが考えられます。歯科医院でも治療の際に患者から外した金属を定期的に業者が回収に来ます。そのためその収入は雑収入に載っている必要があります。

 長期未接触・設立以来未接触

長期間調査を行っていない会社や設立から1度も調査をしていない場合も前述の理由を勘案して選ばれる可能性があります。どのような会社なのかを見るためにお邪魔するといった意味合いです。

 まとめ

公務員であった者は辞めても守秘義務が課せられているためにすべてをつまびらかにするというわけにはいきません。そのため限られた内容を載せるに止まっていますが、この内容だけでもかなり調査に選ばれる会社のイメージができたのではないでしょうか。

不正な計算をしていればどこかから綻びが出てやがては知られてしまいます。そのことを念頭に置いておいていただきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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