小規模企業向け法人税申告ソフトランキング|4社比較レビュー

比較検討する写真

 

法人税の申告は専門性が高く、なかなか初心者には敷居が高い。そこで税理士に依頼しようかと顧問料を調べると月額3万円にその他決算料が4ヶ月分だの年末調整が、、、などとても負担できない。やっぱりなんとか自分でできないか。と考える会社さんは多いのではないでしょうか。

そこで税理士向けではなく、一般の小規模企業向けに自社で申告書を作成する目的で作られた法人税の税務ソフトをピックアップして、本当に専門家でなくても法人税の申告書類一式ができるのか、また、使い勝手はどうなのかといった点を比較検討して、その実態をランキングによってお届けしたいと思います。

今回はフリーウェイ税務、税理士いらず、楽々法人税、全力法人税という4つのソフトを実際に使用して検討しました。

ちなみにこの記事は全力法人税を販売している会社の関係者が執筆している記事です。客観的に評価しているつもりですが、バイアスがかかっていることもあるかと思いますので、その点あらかじめご了解の上お読みください

このランキングは税理士に頼まずとも自分で申告書を作成できるかという視点に立って評価しています。

それではランキングに移りたいと思います。

第4位 フリーウェイ税務

フリーウェイ税務

 ソフトの特徴

無料でe-tax(電子申告)によりで申告ができる。他社は無料では申告書の印刷に制限をかけるなど、無料で申告書を作成することができない中、この点は他社を引き離して優れている点と言える。

ただし、電子申告にしか対応していないと明言している。

法人税の申告書、勘定科目内訳書、事業概況説明書、地方税の申告書、消費税の申告書といった申告に必要なすべての書類を作成できる。

 対象法人 

特に対象を設けておらず、自社で使用したい申告書が対応していればどんな法人でも申告が可能。

 価格 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

前述のとおり無料。

無料版の有料版との違いは以下のとおり。

  1. 登録できる法人数が1社
  2. 同時利用1名
  3. データ保存5年間
  4. 対応帳票が一部制限

しかしながら小規模企業向けという点を考えれば無料版で十分と言える。⒊は申告書を紙で作成することを考えれば、紙で7年間(場合によっては最長10年間)保存すればいいですし、⒋も小規模企業を考えれば十分網羅されていると言えると思います。

 使用環境 ⭐️⭐️⭐️☆☆

  • OSはWindowsのみブラウザはInternet Explorerのみ(他のブラウザは一部の機能が動作しないか正常に表示されない場合あり)

Macユーザーが使えない点や推奨ブラウザがInternet Explorerのみという点が旧来のパッケージソフトと変わらず−2ポイント。

 法人税の知識が必要か ⭐️☆☆☆☆

  • 決算書に値を入力しても別表4・別表5に転記しない。この点は致命的。これができないと別表の構造を1から学ぶ必要が出てくる。(-2Point)
  • 地方税の申告も1から手入力(-2Point)
  • その他別表も基本的に足し引き程度は計算するが基本的に自分の判断で手入力

法人税の知識がかなりないと申告書が作成できない。税理士でもできない人がかなりいるのではないかと思うレベル。単純な足し引き、合計算出程度はしてくれるが基本的にはほとんどを自分の判断で手入力するイメージ。

 使い勝手 ⭐️☆☆☆☆

 良い点

  1. 画面はシンプルで操作はわかりやすい。

 悪い点

  1. 他社との会計データの連携ができない。(つまり基本的に手入力。)
  2. 勘定科目内訳書の取引先の保存ができないため、毎回取引先名、その住所を手入力する必要がある。
  3. 決算書のデータから法人税申告書へのデータの受け渡し、法人税申告書から地方税申告書への引き渡しなど関連するデータを一切連動させないため、知識も労力も必要とする。省力化への配慮が感じられない。
  4. マニュアルを見ないと操作できない。
  5. 値を入力する際にいちいち「編集」ボタンを押さないと入力できない。入力した後毎回「登録しました」のメッセージをボタンを押して消す必要がありかなり面倒。
  6. 無料版はサポートなし。

以上使い勝手を総合すると良い点で+1ポイント、悪い点でー6ポイントでトータル5ポイント減点。

 総合判定 ⭐️⭐️☆☆☆(2.25)自力でできない

価格(5)+使用環境(3)+法人税の知識(1)−使い勝手(0)=9point/4(項目)=2.25point

価格が無料という点が飛び抜けて魅力的ですが、小規模法人が自力で申告書を作成するという観点から言えば使ってはいけないレベル

法人税と地方税の知識がないと申告書を作成できない。また省力化という考えがほぼないのではないかと思えるほど連動できるところや入力の手間を省けるところを普通に手入力を求めてくる。ユーザーに頼りきりのソフトというイメージ。

適しているのは、かなりの法人税の知識を持ち、手書きするよりは電子申告の方が良いと考える方か。電子申告もコストがかかることを考えれば、そんな人いるのかと思ってしまいますが。

第3位 税理士いらず

 税理士いらず画面2

 ソフトの特徴

  • 会計ソフト機能があるため、決算書が作成できる(他の3社はできない)
  • 法人税の申告書、勘定科目内訳書、事業概況説明書、地方税の申告書、消費税の申告書といった申告に必要なすべての書類を作成できる
  • サポートは無償でお問い合わせフォームからのメール対応
  • e-tax非対応

 対象法人 

  • 資本金1億円以下で、事業所は1つだけ
  • 税額控除は不要
  • 複雑な申告調整がない
  • 消費税は税込み経理で処理している

 価格 ⭐️⭐️⭐️⭐️☆

  • 新規購入・・・16,500円(税込)
  • バージョンアップ手数料・・・5,500円(税込)

2年目以降が低価格なためずっと使い続けることを考えれば値段設定は2位。

 使用環境 ⭐️⭐️☆☆☆

  • 対応OSはWindowsのみ、Macが使えない(−2Point)
  • パッケージソフト(−1Point)

Macユーザーが一切使えない点でー2ポイント。パッケージソフトなのでアップデート版をインストールする手間等がある点で−1ポイント、クラウドより処理速度が早いという点で+1ポイント

 法人税の知識が必要か ⭐️⭐️⭐️☆☆

  • 法人税申告書別表2同族会社の判定が知識がなければできない(−1Point)
  • 設立2年目以降での利用者は当期より前に取得した減価償却について別表16に手打ちする必要があるなど、減価償却の計算機能が十分でない(-1Point)

上記2つの点を除けば税金の加算減算等面倒なところが自動で計算され、法人税の計算から、地方税の計算まで自動計算している点知識がなくても可能であろう

 使い勝手 ⭐️⭐️⭐️☆☆

 良い点

  1. 会計ソフト機能があるため、申告書が完了した後の法人税等の仕訳が自動で入り便利
  2. 事業概況書の決算書データを記入する部分を会計データ値を取り込むことができるので便利
  3. パッケージソフトなので処理が早くサクサク動く

 悪い点

  1. 会計ソフト機能が、複合仕訳ができない点、補助科目の設定ができない点でほぼ使えない。それゆえに税理士いらずの会計ソフト機能を使わずに申告書を作成することが至難の技。弥生会計以外の他の会計ソフトのデータを加工してインポートするのは相当手間。ほぼできないと言っていい。弥生会計以外は諦めた方がいい。
  2. 1のとおり会計ソフトからデータの取り込みが事実上弥生会計からしかできないが、弥生会計の期首残高を取り込めないので期首残高を手打ちする必要がある。
  3. 勘定科目内訳書の取引先を保存する機能がないため、同じ取引先でも毎回手打ちしなければならず、毎年毎回手間。また、摘要から拾ってくるのか余計なデータを追加してくるため、そのデータをいちいち削除するのが手間。
  4. マニュアルを見ずに直感的に操作できない。会計ソフトの機能がある分導線がわかりづらい。
  5. windowsパッケージソフト特有のインターフェイスが昔のままでださい。

以上使い勝手を総合すると良い点で+3ポイント、悪い点でー5ポイントでトータル2ポイント減点。

 総合判定 ⭐️⭐️⭐️☆☆(3)自力でできるかも

価格(4)+使用環境(2)+法人税の知識(3)+使い勝手(3)=12point/4(項目)=3point

設立当初から税理士いらずを使い、付属の会計ソフトで頑張るか、または会計ソフトが弥生会計なら自分でも申告書ができるかも

例えば、弥生会計で減価償却費を計上しているのに、税理士いらずの方でも減価償却費の別表を作る際に減価償却費の計算が行われるが、そのときにもう一度減価償却費を自動で計上し、その仕訳が削除できないなど連動面での対応に不備がある。こういうときにある程度の会計感覚を持っていないと減価償却費を二重計上したことに気づかず、申告してしまうといったことも考えられる。

税理士いらずの製品紹介で自ら次のように言っている。「新設法人のお客様が「税理士いらず」を導入する方法は、とても簡単ですが、お客様自身に、最低限の仕訳作成知識や、税金の知識は必要です。」

そもそも自社の会計機能で帳簿を付け、それを元に申告書を作成することを想定して作られているようだが、その会計機能が前述のとおり使えない。かといって、他社会計ソフトをベースに申告書を作れるかと言ったら、弥生会計ならなんとか可能といったところ。前述のとおり弥生会計との連携も中途半端なので、これならいける!と言いづらいソフト。

消費税の申告書を作れるなど他社にないメリットもあるので、ある程度の税法の知識と会計の知識があれば申告書を手書きやエクセルで作るよりは作業の効率化も図れ、税務ソフトとしては及第点はあげられるソフト。

第2位 楽々法人税

楽々法人税画面

 ソフトの特徴

  • 弥生会計のデータから法人税・地方税の申告書を自動作成
  • 法人税の申告書、勘定科目内訳書、事業概況説明書、地方税の申告書が作成できる(消費税の申告書は×)
  • サポートは無償でお問い合わせフォームからのメール対応
  • e-tax非対応

 対象法人 

  • 弥生会計を使用している資本金1億円以下の一般中小規模法人
  • 1都道府県にのみ事務所等(支店、営業所、工場)を有する法人
  • 1年決算

 価格 ⭐️⭐️⭐️☆☆

年一律11,000円(税込)

 使用環境 ⭐️⭐️☆☆☆

  • OSはWindowsのみ、Macが使えない(−2Point)
  • パッケージソフト(−1Point)

Macユーザーが一切使えない点でー2ポイント。パッケージソフトなのでアップデート版をインストールする手間等がある点で−1ポイント。

 法人税の知識が必要か ⭐️⭐️⭐️⭐️☆ 

  • 法人税申告書別表2同族会社の判定が知識がなければできない(−1Point)

上記のほか受取配当金や寄付金など法人税の知識が不可欠な点を除けばかなりの部分を自動で計算するため、法人税の知識がなくても申告書が作成できると思われる

ただ、たまたまなのか少なくとも私が作成した申告書の別表5⑴の納税充当金と税金の部分が正しいものとなっていなかった。

 使い勝手 ⭐️⭐️⭐️⭐️☆

 良い点

  1. 事業概況書の決算書の値を記入する部分を会計データから値を取り込むことができるので便利
  2. パッケージソフトなので処理が早くサクサク動く
  3. 多くを自動で計算するため少ない操作で申告書を作成できる(勘定科目内訳書を除く)

 悪い点

  1. 弥生会計を使っていないとこのソフト自体使うことができない(-2Point)
  2. 勘定科目内訳書の取引先を保存する機能がないため、同じ取引先でも毎回手打ちしなければならず、毎年毎回手間。
  3. 画面全体の表記、ヘルプの文字が細かくて見づらい。windows然とした画面デザインが野暮ったく使いづらい

以上使い勝手を総合すると良い点で+3ポイント、悪い点でー4ポイントでトータル1ポイント減点。

 総合判定 ⭐️⭐️⭐️☆☆(3.5)たぶん自分でできる

価格(3)+使用環境(2)+法人税の知識(4)+使い勝手(4)=13point/4(項目)=3.25point

同族会社の判定部分を除けば法人税の知識がなくても少ない操作で申告書ができ、専門家でなくても使えるかという観点からすれば十分及第点を与えられる。

しかしながら、弥生会計を使っていないとソフト自体利用できない点が致命的に使い勝手が悪い。またwindowsでしかもパッケージソフトという点で時代遅れ感が否めない。ただ、パッケージソフト故に動作が早いという点は利点。

弥生会計を使っている会社で、さらにwindowsを使用しているのであれば検討に値すると言える。

第1位 全力法人税  

全力法人税画面

 ソフトの特徴

  • クラウド型であるため、Windows・Macを問わず使用でき、ソフトのインストールが不要。
  • 弥生会計(オンライン含む)、freee、マネーフォワード、その他の会計データを取り込むことが可能。
  • 法人税の申告書、勘定科目内訳書、事業概況説明書、地方税の申告書が作成できる(消費税の申告書が×)
  • サポートは無償でお問い合わせフォームからのメール対応
  • 電子申告(e-tax・elTax)に対応

 対象法人 

  • 資本金1億円以下
  • 1年決算
  • 普通法人(公益法人、一般社団法人、人格のない社団、特定医療法人等非対応)

 価格 ⭐️⭐️☆☆☆

  • 新規購入・・・21,582円(税込)
  • 2年目以降・・・年11,000円(税込)

 使用環境 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

クラウド型ソフトであるため、4社のうち唯一Windows・Macを問わず使え、ブラウザの縛りもなく使える。

4社の中で一番パソコンの環境に縛られずに使える。

 法人税の知識が必要か ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

4社の中で唯一同族会社の判定まで法人税の知識なく判定できるなど、法人税の知識がなくても使えるよう工夫されている。

会計データを取り込む場合はその会計データから、会計データを取り込まない場合は決算書の中の必要な数字数カ所を入力することにより、法人税・地方税の申告書が自動で作成される。

 使い勝手 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

 良い点

  1. 4社の中で唯一勘定科目内訳書の取引先情報を保存でき、1度入力すれば2度と取引先名・取引先住所を入力する必要がないため、相当の省力化が図れる。
  2. 弥生会計以外にも4社のうち唯一クラウド会計ソフトfreeetとマネーフォワード、弥生オンラインの会計データを取り込んで申告書を作成できる。
  3. ⒉のように会計データを取り込めるほか取り込まなくても決算書ができていれば申告書を作成できる。(楽々法人税は弥生会計から取り込む必要があり、税理士いらずは自社の会計ソフトを使用するか弥生会計から取り込む必要がある。)
  4. 会計データを取り込むことで勘定科目内訳書の値や事業概況説明書の決算データを自動で取得する。
  5. 画面がシンプルでマニュアルを読まずとも直感的に操作できる。
  6. 複数事業所にも対応
  7. 電子申告に対応

 悪い点

  1. 平成28年7月のリリースで実績に乏しい。(ユーザー数は13,000社以上とのこと HPより)
  2. インターネットのブラウザ上で動くため、パッケージソフトに比べ動作が遅い。

以上使い勝手を総合すると良い点で+5ポイント、悪い点でー2ポイントでトータル3ポイント加算。

 総合判定 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️(5)自力でできる上に最も効率的

価格(2)+使用環境(5)+法人税の知識(5)+使い勝手(8)=20point/4(項目)=5point

全力法人税はこの4社の中で初心者が最も簡単に、そして最も無駄なく効率的に申告書が作成できるよう工夫されているソフトと言える。

画面がシンプルであるために、次に何をしていいかわからないということがない点で初心者が使用するのに適していると言える。

勘定科目内訳書の取引先の情報を保存することで、毎年毎年毎回毎回同じ取引先の名称と住所を入力することから解放される機能や、取り込んだ会計データから勘定科目内訳書に記入すべき情報を提案してくる機能など、随所にユーザーが手間となる部分を省く工夫が施されています。

また、クラウド会計ソフトの登場で自社で帳簿をつけるハードルが下がりつつある今、その代表であるfreeeやマネーフォワードの会計データを取り込める点も他社にない大きなメリットでと言える。また、クラウド型であるため他社のようにパソコンの使用環境によって使用できないということもない点など他の3社と比較しても優れている点が多くソフトとしての幅も広く最もバランスが取れていると言える。

このように全力法人税は法人税の知識がなくても自社で申告書が作成できるだけでなく、小規模の法人であれば誰でも無駄なく効率的に面倒な法人税の申告書類一式を作成できるかなり優れたソフトだと言える。

>>全力法人税へのリンク

 まとめ

1位 全力法人税、2位 楽々法人税、3位 税理士いらず、4位 フリーウェイ税務という結果でした。

以上紹介してきたように、今やソフトによっては、法人税の知識がなくても法人で必要な申告書類一式ができる時代です。小規模の法人であれば、税理士を雇わずとも十分にやれるツールが揃ってきています。法人規模によっては年に一度の申告で税理士に多額な支払いをせずとも、ソフトの力を借りれば低予算(1/10程度)で、しかも効率的に作成できるといったケースも十分に考えられます。

申告納税制度は自分で申告をすることが前提となっている制度です。自分で申告できるに越したことはありません。

また間違っていたらと不安を覚えることがあるかもしれません。元国税調査官として次のことを言いたいと思います。

  • 売上が3,000万円以下
  • 赤字の決算が多い
  • 設立から3年以内

この3つのうち2つに該当すればかなりの確率で税務調査が来ません。つまり、間違っていたところで指摘を受けないのなら、影響はほとんどないのではないでしょうか。もし、税務調査で指摘されたとしても、そこを今後修正すればいいのです。税務調査で指摘を受けるということは元々支払うべき税金を支払うことなのですから。

また、税理士に依頼する余裕がないから申告しないというのは最悪です。税務当局としても申告をしないということが一番嫌なのです。そういう意味では小規模な会社さんはコストをかけずに今出来うる限りの申告書を提出すれば十分ではないかと思います。

このような税務ソフトを使って、効率的に申告を済ませたいものです。

執筆者 ジャパンネクス株式会社代表 元国税調査官 税理士 海野 耕作

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